「Red」・・・島本理生 (中央文庫)

(内容)
夫の両親と同居する塔子は、
イケメンの夫と可愛い娘がいて姑とも仲がよく、
恵まれた環境にいるはずだった。
だが、かつての恋人との偶然の再会が塔子を目覚めさせてしまう。
胸を突くような彼の問いかけに、仕舞い込んでいた不満や疑問がひとつ、
またひとつと姿を現し、快楽の世界へも引き寄せられていく。
上手くいかないのは、セックスだけだったのに――。

Red

「Red」を読みながら(中盤まで)島本理生さんの原作映画
『ナラタージュ』を観た時の不快感を思い出してしまった・・・

まず本作の主人公・
塔子の優柔不断さに呆れ
そこにつけこんだ鞍田の行動には女性を馬鹿にしているのか!と怒鳴り散らしたくなり
塔子の同僚の小鷹もいけすかない・・・そして塔子のマザコン夫・真の鈍感さは罪だ

イケメンなら誰でもいいのか?と思ってしまったほど
塔子の周りに近づく男性が酷すぎる・・・
中盤まではただの官能小説かと思いながら読んでいましたが
後半に向かって登場人物の抱えている問題が次第に浮き彫りになっていき
塔子が自分でも気付かなかった幼い頃から抱えてきた心の傷
その傷のせいで塔子は自己肯定感が低く夫からの理不尽な正論による日常的な暴力に
(真綿で締めつけるような精神的な言葉による暴力)気づけずにいた
・・・というより鈍感になっていた!?
鞍田や小鷹との出会いにより塔子は自分の抱えている問題に向き合えるようになる
小鷹は第一印象は最悪でしたが思いのほかいいやつでしたね(でも好きなタイプではない!)
鞍田については自分中心の感が拭えず最後まで理解出来ませんでしたが
ただ鞍田のお蔭で塔子は自分を取り戻し生き直せたのかな!?

エピローグで、その負の連鎖が塔子の娘・翠に引き継がれてしまったのかと危惧しましたが・・・
・・・家庭環境がどうあるかが子どもの心の成長に大きく影響を及ぼすのだと
今更のように気付かされた物語でした
親の責任は本当に大きい・・・それをどれだけ自覚して子どもと向き合うのか・・・
塔子は少なくとも翠に謝ることが出来た、それだけでも少しは救われたかな!?

本作『Red』では様々な問題が描かれておりとても考えさせられました
男尊女卑(家庭でも・職場でも)ステレオタイプの女性像
夫婦間のセックスレス、不倫でのセックス依存?
同居家族の問題、親子関係の不和、そして子どもへの負の影響・・・等々